自分は「他人と分かり合いたい」のだな。

 2022年11月9日に4人組ロック・バンド“シンガーズハイ”ミニ・アルバム『Melody』をリリースしました。昨年リリースされた『Love and Hate』以来約1年ぶりのリリースとなる今作には、すでに配信リリースされている「daybreak」、「ノールス」を含む全7曲が収録されております。
 
 さて今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“シンガーズハイ”の内山ショートによる歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け! 今回は第1弾。綴っていただいたのは、自身の歌詞の特徴についてのお話です。根本にあるのは「他人と分かり合いたい」という気持ち…。ぜひ、歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。



言葉にするのが下手くそだから、せめてメロディをつけて“歌詞だから”という免罪符のもと好き勝手やっていたら、その歌詞に関して文章を書かせていただくことになってしまった…。ありがたいことだけども本当に困っている。
 
僕の今まで書いてきた歌詞を落ち着いて1つずつ見返してみると、兎角自分は「他人と分かり合いたい」のだなということが分かる。11月にリリースした2nd mini Album『Melody』から抜粋してもM-1「daybreak」では<分かってくれない>、M-2「ノールス」では<分かるわけない>といった言い回しが執拗いくらい出てきてしまっている。
 
一言で言い表すならラブソングと受け取れるものがとても多いし、そもそもロックバンドというのは愛と人生くらいしか歌えるものなんてロクにないと思っちゃいるが、できることなら皆が使いがちなエモい風景描写(なんかやたら夏とか海とか好きっすよね)だとか、あの人の髪型、吸ってた煙草、飲んでたお酒、だとか、そういった範囲の広いようで狭い固有名詞じゃなくて、より自分と相手に限定して物事を伝えた方が逆に共感できる範囲も広がるんじゃないか? と思ってます。
 
分かり合うっていうのは、お互いの考えや主義の違いを受け入れ合う、許し合うといったものであるけども、それはネガティブな言葉で変換すると“諦める”ってことにとてもよく似ているように感じる。他人と気持ちをぶつけ合って、妥協点を模索した上で、漸く落ち着いたときに、それでもまだどうしても消えてくれないあのなんとも言えない気持ち悪さや、やるせなさのようなものはそれじゃないかなと。
 
自分は小さい頃から他人の感情にとにかく敏感でした。母親や昔好きだった人たちはそれを「優しい人」と言ってくれたけど、僕はそれを優しさとは思えないんです。共感性の強さは時に他人の気持ちを利用したり、逆手に取ったりして相手を傷つけることもできるし、実際にそうしてきてしまったことが沢山ある。でもだからこそ、そういう人間がどうあるべきなのかと常に考えてしまう。そして、歌詞というものに重きを置いて音楽を聴く人たちもきっとそういう人が多いんじゃないかなと。
 
ギャーギャーと言いたい放題主張をしてしまったけれど、決して僕は自分と違う主張をする人間を否定したくはないんです。分かってあげられないとしても、分かろうとする努力はしたい。ただ僕が敵を作りたくないというビビりなだけなのかもしれないですけどね。
 
僕は頭が良いわけじゃない。なんなら語彙力の乏しさはコンプレックスなんです。活字が苦手で漫画しか読んでこなかったし、元々どもり気質でいざというときに言葉が出てこなくなる。だから基本的に極端な言葉遣いになってしまうし、なんでそんな言い方しかできないの? と思ってしまうかもしれないけど、僕のこの前提が分かった上でシンガーズハイの歌詞をもう一度見ると、また少し違った感じ方になるんじゃないでしょうか。
 
<シンガーズハイ・内山ショート>


◆ミニ・アルバム『Melody』
2022年11月9日発売
 
<収録曲>
01. daybreak
02. ノールス
03. 日記
04. すべて
05. エリザベス
06. 朝を待つ
07. 我儘