がむしゃらに足掻いた先にも、息だけして過ごした日々の先にも。

 2022年1月21日に“angela”がデジタルシングル「ひとひらの未来」をリリースしました。同曲は長編アニメ作品『永遠の831』主題歌。自分は何者で何処に行くのか。葛藤や不安という誰もが持つ感情や、決断し未来を掴んでいく情動が、オリエンタルなサウンドにより深みのある楽曲に仕上がっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“angela”のatsukoによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「ひとひらの未来」に通ずるお話。同曲が主題歌のアニメ『永遠の831』の主人公と自分自身がリンクした部分とは…? 今、夢を追いかけている方。なかなか未来に希望を抱けない方。是非、このエッセイと歌詞を受け取ってください。



未来は必ずやってくる。それはがむしゃらに足掻いた先にも、
息だけして過ごした日々の先にも。

私は18歳で上京し、就職した。そうしたかったわけではなく、歌手になりたいがためにお金をかけず上京し、音楽活動をするための手段として選んだのが就職だったのだ。
 
angelaの新曲「ひとひらの未来」は、神山健治監督・脚本の新作長編アニメ『永遠の831』の主題歌である。この作品の主人公も同じように上京し、働きながら大学に通っている。自分が何者であるのか? 何のために生きているのか? 誰もが何度も自問自答したであろうこの難問を抱えて、日々生きている。
 
今思い返しても、十代、二十代は常に不安を抱えながら自分を探していた気がする。そこがこのアニメの主人公に、私が言葉を重ね合わせた核の部分かもしれない。
 
日本には四季がある。桜が咲けば新年度とともにいつの間にか始まりの場所に立たされ、そしてあっという間に季節は変わる。花はいつでも勝手に咲き季節を進め、散り際、ほのかな切なさを振りまいていく。
 
私は、未来に希望を抱けない時間をとても長く過ごしてきた気がする。「歌手になる」なんて夢みたいな夢を追いかけたせいもある。ただ、最後のチャンスだと思った「ひとひら」の出会いを繋いでいけたおかげで今もこうして歌っていられるのだ。
 
未来に希望を抱けなかった時、そこに色はなかったが、未来に希望を抱いたとき、突如として世界が鮮やかさを増す感覚を覚えた。不安はどんな時でも消えることなく心に住み続けているものの、それを包み隠してくれるのが希望なのかもしれない。
 
東の方向からやってくる明日は、まだ誰のものでもない。ならば自分のものにもできるはずと信じ、そして動く。全ての未来は、選択と行動の先にあることを大人になっていく段階で少しずつ理解してきた。
 
選択し、行動することで様々な道が開けていくと、例えテレビやネットで言っていても、その事実をまっすぐに受け入れられなかった若い時代。経験していかないと分からないことは、言葉だけでは伝えるのは難しい。
 
しかし、音楽は違う。少ない言葉でもメロディーにのせることで、スッと入っていく。耳から、心に。
 
この「ひとひらの未来」も、やわらかな風のように心にそっと寄り添えたら嬉しい。そして「一歩を踏み出してみようかな」と思ってもらえたならば、この曲を生み出した意味があるのかもしれない。

<angela・atsuko>