自分のなかの女々しさを女性に擬人化しても幸せなひとが出てこない。

俺は曲の中に、その人が生きていて
血が通っていないと嫌なので
最初から最後まで主人公が怒らないような
歌詞を書きたいんですね。

だから血が通うまで書き続ける、頑張る、諦めない。
(back number・清水依与吏)


 冒頭でご紹介したのは、以前、歌ネットの『back number特集!“清水依与吏”インタビュー』のなかで、依与吏さんが語ってくださった歌詞のこだわりについての発言です。その言葉のとおり、back number楽曲のなかで息づいている主人公ひとりひとりが、自分の心に寄り添ってくれていると感じる方、たくさんいらっしゃることでしょう。

 また、同様に各アーティストたちはいろんな想いで歌の“主人公”というものを生み出しております。では、その“主人公”にはそれぞれどのような特徴・性質があるのでしょうか。今日のうたコラムでは、過去インタビューをもとに、様々なアーティストの『主人公の特徴・性質』についての回答を【前編】【後編】に分けて一挙、ご紹介…!

~歌の『主人公の特徴・性質』前編!~

<back number・清水依与吏>
back numberの主人公の男ってちょっと相手の気持ちにあぐらをかきがちなところある(笑)。「花束」もそうだし、「日曜日」とか「光の街」とかも、すごく冷静な感じにね。ありがたさを忘れるタイプなのかもしれないです。それで「あ、やべ!別れるのかぁ!」みたいなときに急に優しくなりだすみたいな(笑)。そういえばカップルの恋愛最中みたいな歌は楽曲もミドルテンポで淡々としていますね。なんか…ダメな男だと思いますよ。

女性の主人公が幸せな歌は…ない(笑)。(中略) まず俺の歌詞は、よく“女々しい”って言ってもらえるんですけど、「行かないでくれよ~」とか「なんであの子は俺のことが好きじゃないんだ!」とかそういう気持ちが“女々しい”と呼ばれるもので、逆に幸せな感情で“女々しい”ってあんまりないじゃないですか。だから、いくら自分のなかの女々しさを女性に擬人化しても幸せなひとが出てこないんだと思います。

(主人公は) 自分ではないとは思うんですけど、完全に自分でないとは言い切れないというか。半々ですかねぇ。難しいところです。最初は全く俺とは違う人間を描こうと思って作っていくんですよ。でもそのうち「あ~わかるわそれ~!」ってなって、「そうか、俺が書いているんだった!」みたいなことによくなるんです(笑)。まぁいろんな主人公がいるつもりではあるんですけど、大まかに分けると何種類かの人しか出てこない気もするしなぁ…。だからなるべく数えないようにしています(笑)。


<コレサワ>
結構、どの曲も<あたし>はワガママですね(笑)。聴く人によっては「こいつヤバイ奴だ」って感じるかもしれません。でも実際、人ってみんなヤバイやん?って思うんです。それに“ワガママ”って言うと悪く聞こえますけど、何も言わない人の方がめんどうくさいじゃないですか!私はずっと「ワガママってすげーいいやん!めっちゃわかりやすいやん!」って思っていて。その良さをみんなにわかってほしいなぁ。だから、たとえヤバく思われても、何かひとつ強い芯が通っている女の子を書きたいんですよね。ワガママな<あたし>が素敵に伝わる歌を届けていきたい。


<reGretGirl・平部雅洋>
付き合っていたら、なんとなく向こうの気持ちが僕から離れているなぁ…みたいなのがわかるんですけど「まぁいつか時間が解決してくれるだろう!」と思うんですよ。そして別れを告げられてから<気づいていたのに無視をしていた>と気づくわけです。さらに、僕がバカなだけかもしれないですけど、恋愛においては、昔の失敗を気づかないうちにまた繰り返してしまうことが結構あるんですよね(笑)。その結果、いくつも<因果応報、自業自得>な歌詞が出来上がります。


<緑黄色社会・長屋晴子>
とにかくあまり自信がないです。きっとどの主人公も。でも、自信はないけれど、何か漠然とした理由で頑張ろうとしているというか。「とりあえず」や「なんとなく」が起爆剤だって良いから、進んでいるというか。そういうガムシャラな主人公が多い気がします。まさに今回の「sabotage」もそうですね。


<ACE COLLECTION・たつや◎>
曲を出せば出すほど、(主人公に)自分の恋愛観がボロボロと出ちゃっていますね。歌詞を書いていると、いつも以上に自分の気持ちと向き合うじゃないですか。過去のことでも今のことでも。だから作詞中に初めて自分の気持ちに気づくこともたくさんあります。「あー、あのとき俺ってこういうふうに思っていたんだ」って。


<片平里菜>
好きだからこそ攻撃してしまうところもあるんでしょうけど、(主人公が)優しくないですよねぇ。ラブソングなのに否定的な表現が多いなって自覚はしています(笑)。たぶん、闘う女性が好きなんです。チャンスを待っているだけだったり、今の現状に満足していたりするよりは、そこからもっと先のいろんな景色を見たいという気持ちがいつもありますね。だから強い女性像が自然と曲の中に作り上げられていくんだと思います。


<ゴールデンボンバー・鬼龍院翔>
僕は何かに強く依存している人の気持ちを描くのが好きなんですよ。だから「燃やして!マイゴッド」でも主人公の女性が、ひとりの男性を神のように崇めて、周りが見えなくなるほど依存している姿をイメージしました。まぁ僕自身もやっぱりサラッとはしていないですからねぇ。性根がジメジメ、ネバネバしております。すごく引きずるし、基本ネガティブなんですよね。そうじゃないとこういう歌を書かないですもん(笑)。


【後編】に続く!