努力は無駄にはならないが、報われるとも限らないのです。

 2021年4月14日に“SAKANAMON”がConcept Mini Album『ことばとおんがく』をリリースしました。今作には、ネクライトーキー・もっさ(Vo&Gt.)が藤森元生との掛け合いで歌唱参加した「かっぽじれーしょん」やNHK みんなのうたに書き下ろした「丘シカ地下イカ坂」など、全8曲が収録。コンセプトである“言葉遊び”と“音楽”を堪能できる1枚となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“SAKANAMON”の藤森元生による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその第1弾です。綴っていただいたのは、今作『ことばとおんがく』に通ずるお話。“ことば”が苦手だった幼少時代、そして、とあることを感じた中学時代。自身の軌跡を遡って明かしてくださいました。是非、楽曲と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ第1弾:『ことばとおんがく』(前編)~

親の話によると、僕は小学一年生に上がる頃になっても滑舌が悪く、上手に言葉を話せなかったらしくて心配したそうです。僕の「ニュアンスが伝われば良い」という漠然としたコミュニケーション方法は当時から培われていたようです。

勉強が出来ない、運動も出来ない、でも努力をしない。僕の小学校生活に必要な能力ステータスは最悪でした。そのくせ自己顕示欲だけは人一倍強いからタチが悪い。

入学当初、名前がゲンキだから「僕元気でしょ?ゲンキ元気!」という持ちネタ一本で存在アピールして頑張っていました。健気でしょ?

そんな僕にも好きな授業が出来ました。「図工」です。

皆が僕の作品を見て評価してくれる。解釈してくれる。この行為が、話す事よりも簡単に自分を「表現」して人とコミュニケーション出来る事に気付いたんです。

図工では、人と違う事をするのが悪い事では無く、寧ろ良しとされる。勉強や運動のように人と競わないし争わない。自由で平和で答えの無い世界。

僕は「物を作る事」に魅了され、アイデンティティーになっていきました。


中学校に上がると「歩くのが早いから陸上部に入りなさい」と親に勧められ陸上部に入ります。運動会の徒競走でずっとビリだった僕は、当然陸上部内でも一番遅かったです。

僕は運動会が嫌いです。徒競走が大嫌いです。無理矢理競わされ、沢山の町内の人達の前でビリの自分を晒し者にされ、親に励まされ、豪華なお弁当を惨めに食べるんです。最悪だ!!

そんな自分の思い出を払拭すべく、3年間修行の様な辛~い部活動に耐え抜きます。そして3年目の運動会200m走、僕の努力の集大成の日。5人で競います。1位になるぞ!


結果、1位にはなれませんでした。2位。でも、生涯で初めての2位でした。

1位はバスケ部の爽やかTくん。たまに体育館周りをジョギングしてる程度の癖に1位。でもTくんは小学校時代から足早かったから、生まれ持った運動神経、才能です。

この時「報われる努力」と「報われない努力」がある事を同時に学びました。

努力は無駄にはならないが、報われるとも限らないのです。

僕はより一層、競う事から逃げる生活を送り始めるのでした。

<SAKANAMON・藤森元生>

◆Concept Mini Album『ことばとおんがく』
2021年4月14日発売
初回限定盤(CD+DLカード) TLTO-30 ¥2,700(税込)
通常盤(CDのみ) TLTO-31 ¥1,800(税込)

<収録曲>
1.ことばとおんがく
2.かっぽじれーしょん feat.もっさ(ネクライトーキー)
3.鬼(Album ver.)
4.レ点 feat.仁井 聡子(FM802 DJ)
5.丘シカ地下イカ坂
6.いろはうた
7.OTOTOTOTONOO
8.PACE