薪をくべろ。

 2022年3月16日に“LEGO BIG MORL”が、ニューアルバム『kolu_kokolu』をリリースしました。このアルバムは、バンドの結成15周年を記念した、メジャー復帰第1弾作品。昨年配信リリースされた「潔癖症」「愛を食べた」のリマスタリング音源、新曲8曲の全10曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“LEGO BIG MORL”のタナカヒロキによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第1弾です。何度も鎮火しかけ、そのたびに息をふきかけ、薪をくべ続け、決して絶やすことのなかったLEGO BIG MORLの炎。結成15周年、そしてメジャー復帰のタイミングの今、その軌跡と想いを明かしてくださいました。



何度も鎮火しかけたことがある。
 
僕はLEGO BIG MORLというバンドでギターと作詞をしているタナカヒロキです。このバンドは結成15周年を迎えた。バンドというのはその中にある炎みたいなものがその時々によって強さが違うとは思う。
 
デビュー当時なんて轟々と燃え盛っていただろうし、何かの要因で上手くいっていない時はパチパチと火は小さくなったりもする。しかし火だけは絶やしてはいけない。僕らには火が消えそうな時が何度かあって、その度に鎮火しそうな微かな火にフーフーと息を吹きかけたり薪をくべた。
 
僕は何年か前に大きなバイク事故を起こした。ICUに入るほどの怪我でも意識があったことが何よりも辛かった。右手は複雑骨折し、先生にも前のようにギターが弾けるかもわからないと言われた。
 
一般病棟に移った僕のPCには数曲のデモがメンバーから送られていた。彼らは薪をくべてくれたのだ。もうダメかもしれない、もう消えてしまうかもしれない、そう思う僕の小さい火に優しい息を吹きかけ薪をくべた。病室で片腕だけで歌詞を書いた。ラッキーなことに僕は文字を書くのは左利きなもんで。
 
その数年後、ドラムが脱退した。メンバーチェンジや脱退を繰り返すバンド。それもいい。しかし僕らは10年以上をその4人で音を鳴らした。その関係性を疑ったことが微塵もなかったので精神的にも、音楽的にも欠けてしまったものが確実にあった。それでも続けると決めた僕らは強がりでも演技でも大丈夫と言い合い、表に出れば前向きな言動をした。裏では泣いているメンバーがいても人生は進む。
 
火を起こすには3つの要素が必要らしい。偶然にもそれは今の僕らLEGO BIG MORLの人数と同じ。点火源、可燃物、酸素。僕らは3人になり、代わる代わるその立ち位置を変え、誰かがその3つのどれかになり火を絶やさず薪をくべた。
 
そのトライアングルは三位一体となり、2022年大きな炎となる。結成15年のバンドが再メジャーデビューするのだ。炎はメラメラと揺れる。その火はあまりにも清潔だ。 
 
全員で金を出し合って買ったボロい車が大阪ドームの近くでガス欠を起こした。誰かがガソリンを買いに、誰かがハンドルを握り、誰かが車を押した。懐かしいその思い出さえも薪をくべる行為。
 
僕の事故の時に音楽を止めなかったことも、メンバーの脱退時に表では無理やり前を向いたことも。あの大阪のスタジオで初めて音を鳴らした瞬間についた火は、15年という時を経てもまだ確実に僕らを熱くする。
 
火が燃え続けるには3つの要素以外にもう1つ要素が必要らしい。それは点火源、可燃物、酸素に加えて酸化の連鎖反応。燃焼の継続というらしい。 
 
それってこれを読んでくれているあなたですよね? 
そうですよね? 
 
顔も名前も知らないあなたが僕らを燃え続けさせてくれていると断言させてください。昔は聴いていた、どこかのタイミングで嫌いになった、最近好きになった。 何だっていい。 あなたさえも取り込んで僕らはまた大きな炎になる。

<LEGO BIG MORL・タナカヒロキ>


◆New Album『kolu_kokolu』
2022年3月16日発売
 
<収録曲>
1. ラブソングを聴いてしまった
2. Hello Stray Kitty
3. 潔癖症 (Remastered version)
4. 心とは~kolu_kokolu~
5. Gradation~多様性の海~
6. 痛い春
7. アソビ
8. 愛を食べた (Remastered version)
9. 分かつ
10.タイムマシン