いやいやちょっと待って、、『僕の想像していたギャル』とは一体…?

 2020年5月13日に“マイアミパーティ”が2nd E.P.『p.q.b.d』をリリースしました。彼らは、溢れる焦燥感と機関銃の様に連射される言葉を グッドメロディに乗せてリスナーの胸を撃ち抜く4人組ロックバンド。今作には、サビで爆発するキラーチューン「p.q.b.d」をリード曲とした、全6曲(新曲3曲+ライブ音源3曲)が収録されております。

 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放ったマイアミパーティの“さくらいたかよし”による歌詞エッセイを3日連続でお届け!今回はその第1弾。綴っていただいたのは、タイトル『p.q.b.d』に込めた想いと、そこにまつわる10年前の彼のとある実体験です。みなさんは、ヒトやモノに対して、一方向しか見られなくなってしまっていることってありませんか? 自分のなかのイメージが凝り固まってしまっていることってありませんか…?

~歌詞エッセイ第1弾~

音楽番組を見ていると、どうも不思議に思う時がある。必ずではないが、そのほとんどは、司会の方がアーティストに他愛もないことを聞く。

例えば「その時計金ピカだけどいくらだったの?500万くらい?」などではなく「ここ来る前は何してたの?」とか「スーパーに行く時くらい、楽な格好で行くんでしょ?」とか。司会の人がアーティストの私生活を引き出すというよりかは、視聴者に少しでも「アーティストも皆さんも同じ人間なのですよー」とアナウンスしているようだ。

かと思えば、キャラクターが濃いアーティストが来ると、そのアーティストとお喋りし、存分にキャラを引き出してから「では歌っていただきましょう」とステージに向かわせる。歌う前にある程度のイメージをお客さんに抱かせるのだ。

そんな風に、何の気なしに歌を聴かせてはくれない。82年前に有名な作家が世間について「作品を、作家から離れた署名なしの一個の生き物として独立させてはくれない」と本の中で書いていたが、まさにその通りだと思った。

じゃあ、一体僕は、僕らはどうすれば良いのかと考えて考えて考えてみるも、やっぱり、自分の書く言葉を信じ、振り向いてくれる人を見つけ、その一つ一つをまずは大事にしないといけない。そして少しずつその輪を大きくしてゆく。何度考えてもその答えにたどり着く。

5月13日に『p.q.b.d』というE.Pを出した。タイトルの「p」という文字は全て形が同じなのに見る角度によって意味も読み方も変わってくる。そんなことに気付いて、何だか僕らと似ているなと思った。音楽を聴いている時の君は「p」、仕事中の君は「q」、たまに怒って「b」になったり、たまに笑って「d」になったり。

10年前、僕は路上で詩を書いて売っていた。今思えば、なんだか胡散臭いことをしていたなぁと思う。けれどその時に、普段なら絶対に関わる機会がなかったであろう、俗にいう“ギャル”が詩を見に来た。自然と振舞おうとするも、頭の中では「ギャルの方と話したことないし…何話せばいいんだろ…」と思っていたのだが、ギャルは「会社でウマの合わない上司がいて、会社に出勤するのが辛い」と言ってきたのだ。僕の想像していたギャルのような、話し方や相談内容ではなかった。

いやいやちょっと待って、、『僕の想像していたギャル』とは一体…?“ギャル”って一括りにされているそれは一体なんなんだろう。何を見た目で一括りにして、その性格や悩み事さえも勝手に決めつけていたんだろうと、ハッとした。僕はその時、人も物事も一方向からしか見ていなかったのだ。

ほかにも例えば、誰しもが抱える“コンプレックス”は、それさえも受け入れてくれる人の“愛情”に気づけるようにあるのかもしれない…だとか、“向けられた愛情”に気付くように“孤独”が存在しているのかとか。少し大げさかもしれないが、いつも僕らは小さなことを大げさに心配して、胸のドキドキが止まらなくなったりする。

一見ネガティブに見えることも、もしかしたらポジティブな意味に考え方ひとつで変わるかもしれない。真昼に避けた水たまりが夜には星を映すように。

<マイアミパーティ・さくらいたかよし>

◆2nd E.P. 『p.q.b.d』
2020年5月13日発売
329-LDKCD ¥1,364+税

<収録曲>
1.p.q.b.d
2.未来予報
3.道
4.シスター Live ver.
5.レイトショー Live ver.
6.一縷 Live ver.