私のDNAだと言える、とても自由な曲が生まれた瞬間だった。

 メジャーデビュー10周年を迎え、来年3月27日(日)に初の日本武道館単独公演開催を発表した“Ms.OOJA”が、7ヶ月連続でデジタルシングルを配信リリース!2021年3月16日に第1弾「FLY」をリリースしました。シリアスでディープなトラックに、Ms.OOJAの力強いヴォーカルがマッチしたミッドナンバー。春を迎え新たな一歩を踏み出す人々を鼓舞するメッセージソングに仕上がっております。

 さて、今日のうたコラムではそんな“Ms.OOJA”による歌詞エッセイをお届けいたします。今回はその第2弾。綴っていただいたのは、新曲「FLY」への想いです。北海道札幌市の芸森スタジオという思い入れの強い場所で生まれたというこの曲。10周年も見据えながらの制作だからこそ、彼女が大切にしたいと思ったこととは…。是非、歌詞と併せて受け取ってください。

~歌詞エッセイ第2弾:「FLY」~

私の制作に欠かせない場所がある、北海道札幌市にある芸森スタジオだ。デビュー翌年の2012年から札幌のラジオ局FM NORTHWAVEでレギュラーラジオ FRIDAYPANTHER(現サタパン)を始めることになり、それまで観光やリリースキャンペーンでしか訪れることのなかった札幌に月に2回通うという日々が始まった。

縁もゆかりもないアーティストを北海道という土地柄なのか、誰もが温かく迎え入れてくれた。音楽好きの優しい人達と美味しいご飯、美味しいお酒、行く度に大好きな場所になっていった。

そして札幌には、ずっと行ってみたかったスタジオがあった。それが芸森スタジオだ。宿泊施設のついた制作スタジオで、坂本龍一さんを始めとする錚々たるアーティストが利用している。そのスタジオをインディーズの頃から近くにいたアーティストが利用している様子をブログなどで見ていて、札幌で制作合宿するなんて、なんて贅沢なんだろう!羨ましく思っていた。

そんな場所でついに自分も合宿をすることになった。2012年夏、一番最初の制作は二人のプロデューサーと参加した。離れのBeeスタジオで、まだまだ要領を得ない制作合宿はビールばかり飲んでいて、メロディーのスケッチをいくつか作っただけで終わった記憶がある。

でも、札幌とはいえ中心部から30分以上離れた山の上、まわりに何もない環境。夏なのに湿度がほとんどなく体が軽くなったような気候。騒音や暑さを気にせず、窓を全開にして外の草木を見ながらの制作は、ここでしか生まれない音があると確信させてくれた。何より、音楽以外のことを考えなくてもいい環境というのは本当にありがたい。決まった時間に出してくれるスタッフの八坂さんの料理は本当に美味しくて、このご飯のために頑張れる!と思うほど。

そんな芸森にもかれこれ9年ほぼ毎年、夏と行ける時は冬にも訪れてたくさんの楽曲を生み出してきた。前フリが長くなったが「FLY」も芸森で生まれた曲だ。

2019年夏、前回の「はじまりの時」と同じく酒井さんとルンヒャンと合宿に挑んだ。10周年も見据えた制作をしていこうとなって、その時に私が思ったのは“もっと自分らしさを出したい”ということだった。

デビューから、歌うことが好きでいろんなチャレンジをしたい!というフレキシブルな性質からいろんな曲を作ってきたし、タイアップや企画に挑戦したり、カバーも大好きでかれこれ100曲ちかく歌って来た。

そこで思ったのは、自分らしい音楽ってなんぞや?という疑問である。今まで好きなように歌って、その経験は何にも代えがたい財産になったが、その分なんだかとっ散らかってしまってるような気がしていた。Ms.OOJAとして「求められるもの」はなんなんだろう? そればかりを考えていた。

泣けるバラード?カバー?元気の出る応援歌? もちろんそういうのも好きだしプロの歌手としてのプライドもあり、いつしか期待に応えようと勝手にがんじがらめになっている自分がいた。本当に表現したいもの、好きなものってなんだろう? と原点に立ち返ってあえて、Ms.OOJAとしてではなく一人の音楽ファンとして曲を作りたいと思った。

アルバムの中にはさまざまな曲があり、その中には私の色が濃く出ている楽曲もある。そして気づいたことは、ファンのみんなは私が私らしく作った曲をちゃんと愛してくれているということ。 表現するのが難しいけど、私のDNAがそのまま入っていて、何の違和感もなく肌にすっと張り付くような楽曲。

コンスタントな合宿や海外でのコライトの経験などによって制作のスピードがアップし、1日1曲の制作ペースが当たり前になっていた近年。酒井さんとルンヒャンという素晴らしい音楽家となら、そのペースでも確実に良い楽曲が生まれるという確信があったが、酒井さんから提案されたのは「今回の合宿は1曲をじっくり時間をかけて作ってみよう」という事だった。

まず1日目にトラックとメロディーを作った、そして二日目からは歌詞を。すごく難しかった。日本語で歌う歌手として、歌詞に英語を極力入れないという自分のルールも破った。もっと自由にもっと解き放って、かっこいい!!と自分が「痺れる音」を追求する制作は苦しくもあり、本当に楽しかった!一週間ほどある日程のほとんどを、この1曲の制作に費した。

Good-bye my Gravity

かわせよ Pressure
振り切れよ Loser

Good-bye my Morality

見え透いた Future
壊したいのさ

FLY TO BE FREE


自分の中の重力やルールやモラルさえもぶち壊して、自由を解き放て!このとても強いメッセージは、私自身に向けられたものだった。そして同時に「もう大丈夫だよ、もっと自分と自分が積み上げてきたものを信じなさい」というメッセージでもあった。自由であることは厳しいことである。厳しさの中に身をおく覚悟を持つことで、自由はやっと生まれる。

新しくも懐かしい、まさに私のDNAだと言える、とても自由な曲が生まれた瞬間だった。

<Ms.OOJA>

◆紹介曲「FLY
作詞:Ms.OOJA・Rung Hyang・Ryosuke“Dr.R”Sakai
作曲:Ryosuke“Dr.R”Sakai・Ms.OOJA・Rung Hyang