流れる季節の真ん中で。

 ラブソングで人気のシンガーソングライター“MACO”が2020年2月14日に新曲「恋蛍」を配信リリースしました。さらに“佐野勇斗×飯豊まりえ”のダブル主演AbemaTVオリジナルドラマ『僕だけが17歳の世界で』挿入歌に、書き下ろしの新曲「桜の木の下」と、卒業ソングの代表とも言えるレミオロメンの名曲「3月9日」カバーが決定…!
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんなさらなる飛躍を感じさせる“MACO”本人による歌詞エッセイをお届けいたします!第1弾~第3弾に分けてお届け。第1弾に続く、第2弾ではカバー曲「3月9日」について綴っていただきました。みなさんはこの曲に思い出はありますか? MACOが思い出すのは、必ず中学時代だそう。一体、彼女にどんな記憶が刻まれ、どんな想いで「3月9日」を歌ったのでしょうか。是非、最後までご堪能ください。

~歌詞エッセイ第2弾:流れる季節の真ん中で。~

このフレーズを耳にすると
胸の奥がこそばゆくなる。
思い出の引き出しが次々に開いていくようで
曲が持つ力を思い知らされる。
ついこないだのことは思い出せないくせに、
中学の頃のことや好きな人がくれた言葉は
鮮やかに蘇るから人は不思議だ。

高校の頃のことは断片的にしか思い出せない。
そもそもあまり思い出がない。
母は私に、まこはこれといって
目立った反抗期はなかったよ~
と言うのだけれど、自分なりに振り返ると
きっとこの頃の私は反抗期だったと思う。
先生にはいつもスカートが短いと怒られていたし
学校祭では一人で歌を歌い出すし、
仲の良かった友達以外には
きっと浮いた存在に映っていたんだろうなと思う。

話が脱線してしまったけど
「3月9日」を聴いて思い出すのは
必ず中学の頃のこと。
中学校の頃の親友とは、
いまだにたまに連絡を取り合う仲。
子どもこんなに大きくなりました~っていう
写真付きのLINEと、
まこの曲聴いてるよ~の報告。ありがたい。
そして必ず話題になるのが
中学校の頃の思い出話。
先生が放った謎のギャグや
当時お腹がよじれるくらい面白かった出来事を
また掘り返して話し始めて
また当時のようにお腹がよじれるくらい笑うのだ。
これは私にとってとても幸せな時間で、
“MACO”が“まこ”になれる時間。
親友はそのまこに、懐かしいねと
当時の思い出話をひとしきりしてから
じゃ、また明日からお互い頑張ろうね、
また連絡するね、とLINEが終わる。

そのLINEが終わったあとも
私は頭の中でしばらく中学校に記憶が戻る。

夏はよく、吉田の家にみんな集まって
バーベキューしたよね
男女7、8人で海やお祭りにも行ったよね
塾の帰り、用もないのにTSUTAYAによったり
コンビニ行ったりするだけで楽しかったね。
塾の帰りはもう20時をすぎているから、
夜みんなで自転車にのっているあの感じが
なんだか心地良くて、少しいけないことをしてるみたいで楽しくて。
地元は遊ぶところが少ないから
行くところがいつも限られていたけど
みんながいればそれだけで楽しかった。



受験を終えた卒業シーズンは
みんなスッキリした面持ちなのだけど、
卒業式が近づくにつれて
私は体の力が抜けていく感覚だった。
心ここにあらず、のような。
毎日一緒にいたみんなともうサヨナラなのか。

卒業式の当日は
あらゆるところに飾り付けがされていて
嬉しいよりも悲しかった。
廊下も、トイレも、この日のために掃除されて
ピカピカだし、学校が学校じゃないみたいで
寂しかった。

合唱のとき、ふと先生方のほうを見たら
担任がワンワン泣いていて
それに気づいた自分達もつられて泣いて
涙でぐちゃぐちゃな顔になりながらも
一生懸命最後まで歌ったなぁ。

頑張ったらいつだって会えるのに、
もう一生会えなくなる様なあの感覚は
今でもLIVE中に思う気持ちと似ている。
またLIVEで必ず会える日がきっとくるはずなのに
ステージを降りたらもう会えなくなってしまうような気がして。



“流れる季節の真ん中で”

レコーディングスタジオで
このフレーズを歌った瞬間
すごく不思議だった。
鳥肌もたった。

私がこの曲を歌うのか。歌えるのか。
聴いたみんなはどんな風に思うのか?
名曲が持つ力は重く私にのし掛かった。

ブースを出てスタジオのソファーで
歌詞がプリントアウトされた紙を眺めて考えた。


綺麗に上手く歌を歌うなんて、
歌の上手い人なら誰だって出来る。
そうでなく、私は人の心の奥に届く歌が歌いたい。
「3月9日」はきっと、
中学の頃の思い出を辿りながら歌えば
きっと良いものができると閃いた。
そして2番は、上京してから今日までのことを
思いながら歌おう。




“瞳を閉じれば あなたが
まぶたのうらに いることで
どれほど強くなれたでしょう
あなたにとって私も そうでありたい”



レコーディングの時も
ミュージックビデオの撮影の時も、
このサビの部分を歌う時には
自然とまぶたが落ちていた。

そして嘘でなく、まぶたの向こうには
本当に大切な人の顔が浮かんできた。



いまの私を形成したのは、
きっと15歳の頃の大切な思い出と
その頃に聴いていた音楽だと思う。



「MACOの曲は私の青春です」


ファンに言われる言葉の中で
最近一番嬉しい言葉かもしれない。


もっとみんなの青春になれるよう
人の心に届く音楽を、
これからも作り続けていかなければならない。

<MACO>

◆紹介曲「3月9日
作詞:藤巻亮太
作曲:藤巻亮太