似ているからこそぶつかり合う、違うからこそわかることもある。

 YouTubeやTikTokでの活動を軸にストリーミング再生累計1億回超えを果たした、23歳のシンガー・ソングライター“Tani Yuuki”。2021年12月8日に1stアルバム『Memories』をリリースしました。今作には、シングル曲「Myra」「Unreachable love song」「W/X/Y」や新曲を含む全14曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“Tani Yuuki”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、今作の収録曲「W/X/Y」のお話です。タイトルは、染色体の女性WX(XX)と男性(XY)が掛け合わされていて、細胞レベルの恋を歌うこの曲。描かれている<僕>と<君>の物語や感情がより鮮明に見えてくる歌詞エッセイを是非、歌詞と併せてお楽しみください…!
 


朝、香ばしく温かい匂いで目が覚めた。大きなあくびをしながら「おはよう」と僕が言うと、視界の外から山彦のように「おはよう」と返ってきた。寝癖と寝巻きで着飾った君が2人分のトーストを焼いている。僕はその横で2人分のコーヒーを淹れた。
 
机の前に並んで腰を下ろし、かったるい口で「いただきます。」垂れ流しのテレビからはニュースが聞こえている。それを右から左へ聞き流しながら朝食を頬張り、開かない喉にコーヒーで流し込んだ。食事が終わると君の食べっぱなしの食器を片付け、一週間たっぷり溜め込んだ洗濯物をやっつけようと風呂場へ向かう。
 
その途中ふと、目をやると、脱ぎ散らかした寝巻きが足跡のようにクローゼットへ続いていた。ため息を一つ落とし、一歩一歩辿るように拾い集め洗濯機にダンクシュートを決める。その不意をついて後ろから君が抱きついてくるまでがいつもの流れだ。
 
家事がひと段落するとガラッと空いた予定に胸が高まった。君も同じだった。なんでもできる、なにをしようか? 今日は休日、晴れ、あえて外に出ないなんてのもありだ。ゆっくりと時間は流れ、陽が昇っていく。2人で買った置き時計と日陰の向きが正午を知らせていた。
 
映えないスナックとアルコールを傍に、映画を見る。贅沢な時間だ。膝にかけたブランケットからは君の体温が伝わってくる。初めは感情を揺さぶってきた光るお伽話も、いつしか心地よい子守唄に変わり、まどろみを抱く中、ひとときの特別を噛み締めていた。  

何かに気づいたようにハッと目を覚ますと映画は終わり、陽は傾き、半分こしていたブランケットはいつの間にか君の胸元までかぶさっていた。夜が冷やした部屋の空気に身震いをし、はだけたブランケットをそっと君の肩まで戻す。
 
僕らは似ているようで全然違う、全然違うようでどこか似ている。君の寝顔を見つめながら幸せと、あらぬ不安を抱き涙が出た。
 
この先、最高と呼べる瞬間も、最悪と言える瞬間も幾度となく繰り返すだろう。その度に拳は開いてあいこでしょ、酸いも甘いも半分こしよう。似ているからこそぶつかり合う、違うからこそわかることもある。噛み合わないのなら一歩ずつ寄り添ってみよう。それでもダメなら割り切っていこう。至らない僕でごめんね、いつもありがとう。2人対の細胞、ずっと一緒にいよう。W/X/Y

<Tani Yuuki>



◆紹介曲「W/X/Y
作詞:Tani Yuuki
作曲:Tani Yuuki

◆1stアルバム『Memories』
2021年12月8日デジタルリリース
 
<収録曲>
01決別の唄
02.W/X/Y
03.おかえり
04.Myra
05.非lie心
06.Unreachable love song
07.Night Butterfly
08.油性マジック
09.百鬼夜行
10.曖昧ミーマイン
11.愛言葉
12.記憶
13.We are free
14.Life is beautiful