あなたは悩むことなく一つだけ、守るべきものを答えられますか?

 今日のうたコラムでは、作詞家・森月キャスさんによるスペシャル歌詞エッセイを第1回~第4回に分けてお届けいたします。Hey! Say! JUMPやKis-My-Ft2、クリス・ハート、浪川大輔、水樹奈々、X21、Do As Infinity、など様々なジャンルのアーティストに歌詞を提供。さらに、自身が手掛けた楽曲は、これまで『日本レコード大賞』で4回の優秀作品賞を受賞。
 
 そんな目覚ましい活躍を見せる森月キャスさんが、今回の歌詞エッセイ連載のテーマに掲げたのは【別れ】です。第1回では、Do As Infinity。第2回では、X21。第3回では、AAA。そして最終回では、浪川大輔の楽曲について執筆。今回はその第1回、Do As Infinityの楽曲「君がいない未来」にまつわるお話を綴っていただきました。是非、あなたの人生における【別れ】を頭に浮かべながら、最後までご堪能ください…!

~第1回歌詞エッセイ:Do As Infinity~

時代は平成から令和に変わり、西暦は2020年を迎えました。誰もが新しい「出逢い」の期待に胸を膨らませていることでしょう。しかし私は敢えて、対極に位置する「別れ」について、全4回の連載で、これまでに関わった作品を1曲ずつピックアップしながら、自分なりの想いを綴っていこうと思います。

1つ1つの記事や作品は繋がってはいませんが、この連載で私が伝えたい想いは繋がっていきますのでどうぞ最後までお付き合い頂けましたら幸いです。

初回となる今回は大切な「君がいない」「未来」をテーマに、Do As Infinity「君がいない未来」をご紹介させて頂こうと思います。作曲は大西克巳さん。私も所属するチーム(Blue Bird's Nest(旧tearbridge production))のクリエイターです。

Do As Infinityは、これまで「誓い」「黄昏」「Mysterious Magic」と多くの表題曲を提供させて頂けましたが、「君がいない未来」はその先駆けの作品でした。作詞家としてのキャリアが浅い頃に関わることができたことはとても幸運で、後の活動の基盤になっていると言っても過言ではありません。

何よりDo As Infinityは、私が作詞家を志す前から聴いていて、アマチュア作詞家になってからも何度も聴いて、歌詞を読み込んで心を震わせ、作詞法を学んだ憧れのアーティストでした。純粋にリスナーとして再結成を喜んでいたのも束の間、まさか自分がその楽曲制作に関わることができるとは。あの興奮は今も忘れられません。

また、アニメ『犬夜叉』のオープニングテーマだったことも感激の一つです。私の歌詞を元にタイアップに合わせて共作したのですが、過去に『犬夜叉』の主題歌になった曲のタイトルを歌詞に散りばめる手法は、私一人では難しかったことでしょう。ぜひ「君がいない未来」の歌詞を読み込み、探してみてください。

歌詞の中身にも触れてみましょう。

“守るべきものなんて
悩むまでもなく一つしかなかった”


冒頭のフレーズですが、あなたは悩むことなく一つだけ、守るべきものを答えられますか? 思い浮かべてみてください。「守りたいものなんてない」と、答える人はいないと思います。私はと言うと、やっぱりちょっと悩みます。守りたいものはたくさんありますからね。

でも、この歌詞の主人公は違います。守るべきものは君だと、心から想っているんですね。そうまで想える人の存在がどれだけ人を優しくするか、そして、“君がいない未来”を想像することがどれだけ人を強くするか、それが、この歌詞のテーマです。

恋人や友人、家族との些細なすれ違い。誰しもが経験することだと思います。いつの時代も、人間関係は複雑で繊細ですからね。ちょっとした誤解がボタンの掛け違いになり、永遠の別れに繋がることも少なくないでしょう。それが、人間です。ただ、そうなる前に想像力を働かせられるのも人間です。

人も、物も、時間も、無くしてからその有難みに気づきます。なんでもっと大切にしなかったんだろう、と後から悔やみます。その後悔を、先に想像することができたらどうでしょう。今有る当たり前が永遠ではなく、やがて必ず無くなるんだと想うことができたら、今が変わり、未来も変わるはず。

「君がいない未来」は、そんな大切な人との今を想う歌です。

一度、解散という喪失感を味わったリスナーに、再結成後2枚目のシングルでこの曲を届けてくるDo As Infinity。知らないまま過ごすには、あまりにも勿体ないアーティストです。

あなたには、大切な人がいますか?

<森月キャス>

【第2回「X21」編の更新は1月10日(金)です!】

◆Information
森月キャス所属
Blue Bird's Nest(エイベックス・マネジメント)
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◆森月キャス
『言葉の達人』登場回