言葉で説明できるのならば歌詞である必要はない。

 2020年5月20日に3ピースロックバンド“Plot Scraps”が3rdミニアルバム『INVOKE』をリリースしました。今作には、疾走感溢れる「一等星」やすでにライブで披露されている名バラード「pinky」、エモーショナルなロックアンセム「Teardrop」などバリエーション豊かな全6曲が収録。是非、歌詞と併せて彼らの最新作をご堪能ください…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Plot Scraps”の陶山良太((Vo.&Gt.)による歌詞エッセイを第1弾~第3弾でお届けいたします!3回を通じて綴っていただくのは「自分と歌詞」のお話。まず第1弾では、今作の収録曲「Teardrop」にまつわる想いとともに、彼にとっての「自分と歌詞の関係・向き合い方」を明かしていただきました。

~歌詞エッセイ第1弾:「Teardrop」~

コラムを書くというのは自分にとって初めての行いになるので、何を書こうか非常に迷ったのですが、Plot Scrapsは5月20日に3rd Mini Album『INVOKE』をリリースしたばかりなので、それに触れて然るべきだろうと思いました。『INVOKE』の収録曲を通して「自分と歌詞」について三回分綴ろうと思います。

「自分と歌詞の関係・向き合い方」を三回とも違う視点で描けたら、読み終えた後には立体的に何か浮かぶのでは無いかと思っています。この時点ではどうなるかまだ分からないけど、最後までお付き合いお願いします。

まず一回目はミュージック・ビデオにもなっている、INVOKEの2曲目「Teardrop」について書いてみます。ここでまだ聴いていない人は、YouTubeかサブスクに飛んで、聴いたら戻って来て下さいね。

と言いつつ、この曲についても他の収録曲についても、歌詞の本文以外で語れることは非常に少ない。昔は自分の曲について語りたい事だらけだった。それこそ1stの頃は7000字に近いボリュームのセルフライナーを書いていた程に。

時を経て今では、逆に作品に対する言及は減らしたいと思っている。極端に言うと一言も語りたくないくらいだ。しかしプロモーションの関係だったり、少しくらいは語らなきゃいけない場面もそりゃーあるので、そう言う時(今もそうだ)はなるべく語っても問題のない、サブテキスト的な内容になる様に努めている。

1stから3rdまでの期間のバンドの変化は、端的に自分の内面の変化をイコールで表している。つまり僕は今、自分の作品の歌詞の文面以外の言葉は本質的には必要ないと思っている。

はっきり記しておきたいのが「言葉で説明できるのならば歌詞である必要はない」という事。

例えば好意を相手に伝えるのに「好きです」「好きだ!(大声)」「好き… (照れながら小声で)」で済むのなら、今すぐ直接声にして伝えればいい。そのほうが早いし、それを遠回しに歌にするのというのは些か不自然だし、個人的には少し不純に思える。そんな歌を否定する気は無いし、不純で悪い事など一つもないが、自分が作る時にそれはやらないという事。

ただしこれは「説明できなければできない程いい」という訳でもない。大抵そんな曲は“表現のための表現”になってしまっていたり、単に意味不明だったりする。僕は、そんな曲を昔は沢山聴いていた。今は全く良さが分からない音楽が山の様にある(その逆も然り)。

届けたいのは自分でも形容し切れていない何かであって、それに付随する技法は、表現する為のツールでしかない。クールに表現する事自体が目標地点になっている表現はナルシシズムでしかなく、自分にとっては避けるべき事だ。頭に渦巻く形のない“何か"”に、適切に形を精査した器を与える行為、それが作曲の一つの定義だと考えている。

別の話。推測になるが、ネット発達以前のミュージシャンはお手紙でしか作品の感想を知る術は無かったのではないだろうか。ライブ会場ではお客さんの反応で少し分かったかもしれないが。

そういう意味でも全く便利な世の中になったもので、このご時世、リスナーの感想というのは至る所から読み取る事ができる。YouTubeに直接書かれる感想や、飛んでくるDM、SNSに流れる感想、自分でブログに長文の感想を書いてくれる人もいる。

「Teardrop」は、ざっくりまとめると“爽やか”“疾走感”“切なさ”みたいな感想が、総意としてあるようだ。その中でも、歌詞の深い所まで触れている感想がごく僅かだがあった。

僕は作曲に関して2ndから、とある決心と共に大きく舵を切り、半年近く自意識と格闘してきた。端的に言うと新しい挑戦だった。「Teardrop」と「オーダーメイド」は特に歌詞に時間が掛かった。その分、それらの感想を見られた時、本当に単純に嬉しかった。それ以外も勿論、感想があるだけで最高に嬉しいが、それらは特別だった。

現在地。何かを失った人は寂しいだろうし。過去と今、振り返れば数多の繋がりが在った歓びを確認できる。それが恋でも、愛でも、愛じゃなくても。

「Teardrop」の内容に関しては、一回書いてみたけど、やっぱりこれ以上書ける事がありません(笑)。でもこの第一回のコラムはちゃんと曲の解説にもなっていると、僕は思うのです。

歌詞の文面の先、最終地点に何を感じるかは、人それぞれ違える様にできている。そんな所がこの曲の歌詞の良い所なんじゃないかと、てめぇの味噌ではあるが、思います。

…コラムとして、ちょっと内容が堅苦しいだろうか? でも自分としては、こんな所を面白いと感じて欲しいのです。

歌詞というと荒唐無稽さまで許容されている世界と思いがちだが、実はそんな事はなく。他のアートと類似した共通点も意外と多く、かつ歌詞でしか表現できない、さらに言えば日本語でしか表現できない叙情。日本のアーティストのそんな所を分析するのが最高に面白いし好きなのです。

次回は「オーダーメイド」という曲について書いてみたいと思います。と言っても歌詞の内容について書けることはほぼ無いですが(笑)。

“読むと、内容にまでは触れないのに、自然と歌詞の奥深さまで踏み込める様になる文章”目指して行きたいと思います。それではまた次回。

<陶山良太>

◆紹介曲「Teardrop
作詞:陶山良太
作曲:陶山良太

◆ニューミニアルバム『INVOKE』
2020年5月20日発売
NBPC-0079 ¥1,500(税別)

<収録曲>
1.一等星
2.Teardrop
3.CHOCOLATE PUNK
4.OZ
5.pinky
6.オーダーメイド