僕はそんなよくわからない「なんかいい感じ」が好きなのです。

 2021年6月9日に“GOOD ON THE REEL”が『花歌標本』をリリースしました。結成15年目に放つ4年ぶりのフルアルバム。今作は“あなた”と“わたし”といった、身近な存在に対する想いを描いた楽曲が多く収録されております。15周年を迎え、ゼロから新たな自分たちの音楽を創りあげ、歌詞を付け、標本のように形あるものとして残したい、音楽に定義付けをしたい、そんな想いがアルバムタイトル『花歌標本』に託されております。

 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“GOOD ON THE REEL”の千野隆尋による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその最終回です。綴っていただいたのは、新曲「標本」に通ずるお話。一瞬の美しさ、よくわからない「なんかいい感じ」が詰まった“標本”のような今作を是非、エッセイと併せてお楽しみください…!

~歌詞エッセイ最終回:「標本」~

僕の実家は、ただいまと玄関のドアを開けると、正面の壁に蝶々の標本が飾ってありました。父が社員旅行で台湾に行った際に買ってきたオオルリアゲハの標本です。父は昔から物知りで、とくに自然のことに詳しく、植物や生き物についてたくさん教えてくれました。

残念ながら僕はそのほとんどを覚えていないわけですが、その影響もあってか植物や生き物、鉱物なんかも好きです。宝石のように綺麗な色を持つ虫や花達。自然に生まれたなんて信じられない程の美しさ。いやむしろ、自然の中でこそ生まれた美しさなのでしょう。

ということで標本ですが、僕の部屋にもいくつかあります。先述したオオルリアゲハやモルフォ蝶、オオルリモンタテハなど、あとは植物の標本もちらほらと…。本当は棚をあらゆる標本や鉱物なんかで埋め尽くして、何かの学者の書斎みたいにしたいぐらいです。虫嫌いで気分を害した方、本当にすみません。

しかしそれ程までに、一瞬というのは美しいものです。その一瞬を写真や絵画などではなく、三次元の一瞬として残す標本。それはきっと、僕らが残してきたCDに繋がる部分があると思うのです。その時のGOOD ON THE REELをピンで留めた標本。

日本人ならではの感覚かもしれませんが、僕はそんなよくわからない「なんかいい感じ」が好きなのです。人の夢のような儚さ。月が綺麗ですねと伝える想い。「はい」と「いいえ」の狭間にある、うまく言葉に出来ない気持ち。そんな言葉を、音を、デザインを、形を、CDとして、標本として残していきたい。今までも、もちろんこれからも。

<GOOD ON THE REEL・千野隆尋>

◆紹介曲「標本
作詞:千野隆尋
作曲:伊丸岡亮太

◆4thフルアルバム『花歌標本』
2021年6月9日発売
初回限定盤 POCE-92118 ¥4,000(税抜)/¥4,400(税込)
通常盤 POCE-12164 ¥3,000(税抜)/¥3,300(税込)

01 あとさき
02 交換日記
03 虹
04 35°C
05そうだ僕らは
06 オレンジ
07 そんな君のために
08 ノーゲーム
09 目が覚めたら
10 標本