今この瞬間が終わることをとても不安に思っていた時期があった。

2020年8月5日に“さとうもか”がニューアルバム『GLINTS』(読み:グリンツ)をリリースしました。きらめきを表す「GLINTS」と名づけられた今作は、夏の恋にまつわる短編映画10作のオムニバスのような、自身初の季節をテーマにした作品に。アルバムと同タイトルのリード曲「Glints」は、突き抜けるような爽やかさと勢いがありながら、淡い夏の情景が浮かぶ、きっと誰もが体験した奇跡の瞬間の連続で起こる最高の夏を歌った1曲となっております…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“さとうもか”による、歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回はその第1弾です。綴っていただいたのは、今回のアルバムのコンセプトとタイトル曲「Glints」にまつわるお話です。忘れてしまうことが不安で怖くて、悲しい。みなさんもそうした気持ちを抱いたこと、ありませんか…?

~歌詞エッセイ第1弾~

夏の夜に友達と遊んでいたら、偶然どこかのお祭りの打ち上げ花火が、街の隙間から小さく光って見えた。なんだかラッキー。この子と一緒にいたら面白いことばかり起きるな。そんなことをその時思った。

私は全部の季節が好きだけど、どれか一つに決めるとしたら夏を選ぶと思う。それくらい好き。暑いのは嫌いだけど。夏の思い出は、振り返ればどれもキラキラしているように感じる。

今回のアルバム『GLINTS』は夏をコンセプトにした1枚で、私の中ではなんとなく10曲というよりも、10人の主人公を立てた短編集のようなイメージで制作した。だからこの「Glints」という曲は、メロディや歌詞を思いつく前から、アルバムのオープニングテーマ的なイメージで、夏を総括するような曲に出来たらいいなという気持ちがあった。

私は少し前まで、今この瞬間が終わることをとても不安に思っていた時期があった。過去に私がずっと覚えていたいと思っていた大切な思い出を、昔は鮮明に思い出せていたのに、段々ぼんやりとしか思い出せなくなってきた事が原因だった。今の事も数年後にはあんな風に忘れて、もしかすると忘れた事すらも忘れて、未来の私はそんなの平気な顔で過ごしていそうなのが恐かったし、悲しかった。

その気持ちに少し変化があったのは、コロナ禍での出来事だった。私にはずっと会いたいと思っていた人がいた。その人とは何年も会っていなくて、さらにここから1年はきっと会えないような状況だった。でもコロナの影響もあって生活の状況が変わった事で、緊急事態宣言後に会うことが出来た。

コロナ禍で息の詰まる思いだったけれど、これは私にとって、予想外の嬉しい事件だった。久しぶりに会うと、忘れていた記憶や昔の自分の感覚がみるみるうちによみがえり、少しベタな言い方だけど、過去の思い出が本当にモノクロからカラーに変化したような感覚だった。

振り返れば忘れてしまった事は多分山ほどあるけど、忘れた全てはきっと自分にもう染み込んでいて、気づかないほど自然に私の一部になっていたんだなと思った。それがとても嬉しかった。

もしこのまま何事もなければ、多分人生あと数十年ある。時々長くて途方に暮れそうになる時もあるけど、過去や未来に捉われず、出来るだけ今この瞬間を全部の気持ちで過ごしていこうと心に誓った。

そう思うと、「Glints」はこの閉鎖的な時期じゃないと出来なかった曲なのかもしれない。今年は行事も沢山無くなって、私が生きてきた中で1番キラキラしてない夏になりそうだなと思っていたけど、そんな中でもきっと一生ものの一瞬は、いつでもすぐ隣にあるんだなと思った。

この曲とこのアルバムが、この夏みんなのワクワクの1つになってくれると嬉しいな。

<さとうもか>

◆3rd ALBUM『GLINTS』(読み:グリンツ)
2020年8月5日発売
ANCP-006 ¥3,000 (税込)

<収録曲>
1.Glints
2.オレンジ
3.Poolside
4.愛ゆえに
5.パーマネント・マジック
6.Strawberry Milk Ships
7.あぶく
8.アイスのマンボ
9.My friend
10.ラムネにシガレット