今回の「近づく恋」は、私の性格とよく似た子を主人公にした。

 2020年4月22日に“井上苑子”がニューミニアルバム『ハレゾラ』をリリース!このタイトルには「(ミニアルバムの発売が)たくさんのひとが、新しい環境で新たなスタートをきる春ということで、爽やかで前向きなイメージがタイトルから伝われば」という想いが込められております。収録されている全6曲、じっくりとご堪能くださいませ…!
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“井上苑子”本人による歌詞エッセイをお届け!今作に収録される新曲近づく恋について綴っていただきました。小中高と”恋愛”に憧れ、理想を描き続けてきたという彼女が、この曲に詰め込んだものとは? 今、あなたが恋をしているお相手を頭に思い浮かべながら、エッセイも歌詞もご堪能ください…!

~歌詞エッセイ「近づく恋」~

私は恋物語を妄想するのが好きだ。それはきっと学生時代、恋愛に憧れていたからだろう。小学校高学年の頃は海外ドラマ、特にハイスクールミュージカル、そして中学生の頃、少女漫画や韓国ドラマにハマって、一層恋愛に憧れを抱いた。そう、本当に恋愛ものしか、見なかった。

小・中学校が女子校だったからと言うのも恋愛に憧れた理由の一つだろう。実際にどんな恋愛に憧れていたかと言うと、朝家まで迎えに来てくれて一緒に登校することや、彼の肩で夕方の公園のベンチでコテっと寝ること、身だしなみはきちんとしていて、馬鹿であってもみんなから好かれている相手であること、自分と少し違う趣味を持っていて楽しそうに教えてくれること。など、妄想をすれば軽く100個は出てきそうだ。

歌詞を書く時は、共学に通い始めた高校生活での朝からの出来事を考えつつ、そういった憧れの恋愛を思い浮かべる。主人公の性格も曲によって違ったりする。目覚ましですぐに起きられるタイプかどうか、朝ご飯をダッシュで口に放り込むタイプか。そうして色々な物語のシチュエーションを考えていると主人公が動きだすのだ。

今回の「近づく恋」は、私の性格とよく似た子を主人公にした。

朝の目覚ましは憂鬱。朝の電車なんてもっと憂鬱。大阪に住んでいたときは電車の長時間の移動は音楽を沢山聞けたり、テスト勉強や宿題を電車でもできるから苦ではなかったのに、東京はどこに行くにも乗り換えがすぐにあったり、私の通っていた学校までは満員電車が当たり前だった。自分の背中でまわりの方の背中をグイグイっと押して乗ったりした。そうしなければ、一生学校に辿り着かないのだ。とにかく、朝は憂鬱だと感じる学生生活だった。

ただ、憂鬱な気持ちを軽減させてくれた魔法がある。それは“恋”だ。私だって高校で好きな人は居た。高校1年生の頃は特に、幼稚園生ぶりの共学で、少しでも男の子を感じるといつでもどきっとした。文字にするとヤバい人みたいだ。

好きな人が出来ると、視界に映るたびに自分の心臓の音が聴こえて、目が合ったらバレそうだから相手の顔は一瞬しか見られない。とにかく不審な行動になってしまい、言葉を選ぶのにも時間がかかって詰まってしまう。そんなことがあった。

それが退屈な毎日からの解放。恋をすると相手の全ての言動に自分の心はハラハラして、退屈なんてもんじゃない。大忙しだ。連絡をとれていれば、家での時間もあっという間だ。まず連絡する口実を考える。そういうのも嫌いじゃなかった。そういった“恋”をした時の初期衝動をこの曲に詰め込んだ。


先生、ふたりに日直させてよ
ふたりにプリント集めさせて
ふたりにごみ捨てさせて
購買の長蛇の列 並ばせてよ
とにかく ふたりきりにさせてよ



なんて、私の理想でしかない。

いや、これでいいんだ。そう、私はこのエッセイを書きながら私の恋愛ソングは私の理想でできているんだなと思った。全ての曲に共通しているかは分からないが、少なくともこの「近づく恋」は、私の憧れと、当時できなかった恋愛の執着かもしれない。

そうだ、17歳、18歳で書いていたときはまだまだキラキラした恋愛に期待していたことを思い出した。今ももちろん素敵な恋をしていきたいと思っているが、あの頃のように毎日の生活に何か恋愛のカケラが落っこちているのかと言うと、、ちょっともう遠くて。遠くからあの頃を思い返すと蘇ってくる情景が私の執着なんだなと思った。

歌詞の主人公の感情や性格が今後どういう風に変わって行くのか、自分でも楽しみだ。とにかくこれを読んでくれた人だけに言うと「近づく恋」は私の憧れと執念。そんな恋の歌も皆さんに愛してもらえると、あのとき上手くいかなかった恋も報われた気がする。

<井上苑子>

◆紹介曲「近づく恋
作詞:井上苑子
作曲:井上苑子

◆ニューミニアルバム『ハレゾラ』
2020年4月22日発売
初回限定盤 UPCH-29356 ¥2,600(税込)
通常盤 UPCH-29357 ¥1,900(税込)

<収録曲>
01.近づく恋
02.ぜんぶ。
03.ラブリー
04.リボン
05.My Way
06.僕らの輝かしい未来