人と会うことが悪になり、孤独が善になった、こんな世の中で。

 2021年8月25日に“ハルカトミユキ”がニューアルバム『明日は晴れるよ』をリリース!約4年2カ月ぶりとなる今作。日本テレビ系『NNNストレイトニュース』のウェザーテーマ曲「夏にだまされて」を含む全8曲が収録。新作についてハルカ(Vo, G)は「『わかんないけど、晴れるよ、大丈夫』このアルバムを通して、自信満々にそう言いたい」、ミユキ(Key, Cho)は「“ラブソング"と“応援歌”がテーマの今作、ど真ん中に勝負を挑む気持ちで曲を作りました」とそれぞれコメントしております。

 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“ハルカトミユキ”のハルカによる歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回は第2弾。綴っていただいたのは、収録曲「君に幸あれ」に通ずる想いです。彼女が「他人事とは思えなかった」様々な人の姿。コロナ禍で人と会う機会が減り、他者に対する想像力が薄れてゆく今だからこそ、多くの方にこのエッセイと歌詞が届きますように。

~歌詞エッセイ第2弾:「君に幸あれ」~

去年の四月、とんかつ店を営んでいた五十代の男性が火災で亡くなるというニュースがあった。周囲には店をたたむと告げていて、店内には油をかぶった痕跡があったという。その数カ月後、路上生活者と見られる六十代の女性が、通りすがりの男に頭を殴られて亡くなるというニュースがあった。女性は、人気のないバス停でひっそりと夜を明かしていて、亡くなる数カ月前までスーパーのパートとして働いていたそうだ。

この二人の半生を伺い知ることは私にはできないけれど、どうしても他人事とは思えなかった。

これらのニュースに限ったことではない。給付金が途絶えて来月の生活費さえままならない、とワイドショーの取材に答える事業主も、過去の作品の一部を切り取られて非国民と言わんばかりの非難を浴びたアーティストも、到底、他人事とは思えない。次々に標的が変わり集中砲火を浴びるのを目にするたび、どうしてみんな、そんなにも全力で火炎瓶を投げつけることができるのか、恐ろしくてたまらなくなる。

人間には想像力がある。経験していないことや、知り得ないものについて、頭の中で思い描く力だ。綺麗事かもしれないけれど、想像力とは、優しさなのだと思う。

亡くなった路上生活者の女性が、試食販売の職でささやかな喜びを見出したり、所持金が底をついても誰にも頼らず(頼るすべもなかったのかもしれないが)自力で立ち直ろうとしていたり、他人に迷惑をかけないよう真夜中のバス停にじっと座っていた姿を想像すると、彼女の人間としての気高さを痛いほどに感じる。どうして彼女が死ななければならなかったんだろう。そして、自分がそうならない保証はどこにあるんだろう。

その疑問が虚しいものだとしても、たとえ想像が間違っていたとしても、最低限思いを巡らせてみることしか今はできない。でもその想像すらやめてしまったら、人が人でなくなってしまうんじゃないかという気がする。

もしもバス停で彼女に会えたなら、今までの人生で楽しかったこと、苦しかったこと、幸せだったことを聞きたかった。今までしてきた仕事のことや、若い頃のこと、家族のこと、たわいもないことを話してみたかった。その気高さの理由を知りたかった。助けになることがあるなら、したかった。

でも、と思う。私が本当にそうすべき相手は、自分の母親や、友達や、近くにいる誰かなんじゃないだろうか。今、一番近くで、ギリギリの苦しい思いをしている誰かを見逃していはいないだろうか。人と会うことが悪になり、孤独が善になった、こんな世の中で。大切な人を思う想像力を持ち続けることだけが、私たちに残された、微かな希望なんじゃないだろうか。

<ハルカトミユキ・ハルカ>

◆紹介曲「君に幸あれ
作詞:ハルカ
作曲:ハルカ

◆4thアルバム『明日は晴れるよ』
2021年8月25日発売
QAIR-10178 ¥3,000(税込)

<収録曲>
1. RAINY
2. 鳴らない電話
3. 夏にだまされて
4. 言えたらいのに
5. TIME
6. 君に幸あれ
7. あの場所で
8. 約束