全部忘れようと思って君の綺麗なところを歌にした。

 2021年3月10日に“Karin.”がニューアルバム『solitude ability』をリリースしました。今作は、昨年2月にリリースされたセカンドアルバム『メランコリックモラトリアム』以降、3作のepをリリースしてきたKarin.の等身大の楽曲が収録された、10代最後のアルバムとなります。是非、その歌詞を、歌声を、じっくりと味わってください。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“Karin.”による歌詞エッセイを2週連続でお届け!今回はその【前編】です。綴っていただいたのは、新曲「過去と未来の間」に通ずる想い。<この気持ちは大人になったと同時に 消えて欲しいな>と幕を開ける歌。大人になりかけの今、全てを受け入れられはしない今、抱えている“この気持ち”とは…?

~歌詞エッセイ:「過去と未来の間」~

忘れたくないことを思い出しては
戻れないとわかっているはずの
過去の自分に声を掛けたくなった

もしあのときに
「貴方はもう幾つになったのか」と聞けば
効かない錠剤を口にすることはなかったのだろうか

正しいと思っていた正義が
目の前から姿を消したとき、
確かに私達は存在した
其処を居場所にしてしまえば
嫌になるくらい分かり合えると思っていた

嘘をつけばつくほど
呼吸ができなくなっていった人を私はただ見ていた
そんなとき、希望だと思っていた明日に
「本当の意味を知るのは貴方じゃない」と言われた
その言葉を受け入れようと努力したが
このままじゃ涙さえも乾いてしまうから
明日の私に手紙を書いた
「みんなが思う私になれなくてごめんなさい。
私はまだ、優しい嘘に溺れています」と

誰が言い出したのかさえもわからない人達が描く
抽象的な想いを傷つけるかのように
ただ振り回して壊したって
それを、貴方が教えてくれた「恋」だと
認識することなんて不可能に近いだろう
そして、ずっと揺らいでいた根拠のない理想像は
そっと幕を閉じた

苦しいときに求めたのは
誰かから与えられた「優しい嘘」だった
失ってから気づいたって私はもう透明人間
過去が憎く感じるのは今の貴方がとても綺麗だから
あと数時間、この悲しみを耐えたら
私が知ってる朝がくる

「そんな生活に心当たりはない」と
貴方は声を荒げているけれど
そんなこと、今に始まった訳じゃないだろう
失った過去にばっかり目を向けるから
今此処にある生活に答えを出せないんじゃないか

消えかけたメロディーに
名前を付けて人間でいるのが辛くなった
全部忘れようと思って君の綺麗なところを歌にした

でも歌う度に思い出すのは
もう戻ることも出来ない楽しかった頃の君だった

未来について考えて不安になる君と
過去にばっかり囚われてしまう私は
今を生きていない

悲しいけれど私達は他人で
出会わなくてもお互い生きてこられた
それでも出会ってしまったのは今があるからだ

貴方が私に笑いかけると
私は私じゃなくなってしまうのにね

愛が苦しくなって
それが憎しみに変わっていった君を
私はただ見ていることしかできない

それは私の過去に君は存在していなくて、
君の未来に私の居場所は何処にもないから

私は、君の気持ちが大人になってゆく様を
ただ見届けることしかできない

<Karin.>

◆紹介曲「過去と未来の間
作詞:Karin.
作曲:Karin.

◆ショートフィルム
「solitude ability - 過去と未来の間 - 」
枝優花 × 伊藤万理華 × Karin.
https://youtu.be/-KFq_6ImJUY

◆Karin. 3rd Album『solitude ability』配信はこちら!
https://Karin.lnk.to/solitudeability

◆3rd アルバム『solitude ability』
2021年3月10日発売
UMCK-1685 ¥3,000(税抜)

<収録曲>
01. 君が生きる街
02. 瞳に映る
03. 痛みがわかれば
04. 泣き空
05. 知らない言葉を愛せない
06. シネマ
07. 君の嘘なら
08. 愛は透明
09. この感情にはまだ名前がない
10. 過去と未来の間
11. ドライフラワー
12. 涙の賞味期限
13. 世界線