作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、シンガーソングライター・たむらぱんとして活動し、田村歩美としてもイラストの展示会や数々のCMでの歌唱、様々なアーティストへの詩曲提供など多岐にわたり活動を行っている「田村歩美」さんをゲストにお迎え…!
田村歩美(たむらぱん)
代表作
作詞論
歌詞は鍵みたいなイメージ
歌詞は鍵みたいなもの。過去のこと未来のこと、分かりきったことや想像し得ないこと、、、
など受け手によって開かれる扉は様々だと思いますが、そんなアイテムのようなイメージです。
展開は喜怒哀楽の何であれ、自分の中ではその開いた先、その物語の到達地点が、どこか柔い光を感じられるようなものがいいなと思っています。
[ 田村歩美さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    本で読むような長い物語と同じように、歌詞を読むことが好きでした。小さい頃は歌詞を書き写すことも好きでした。自分で長い物語を書くことはできないと思っていたけれど、歌詞だと、物語を作ることができました。長さが私に向いていたのだと思います。そして同時に、歌詞には、言い難い、照れ臭いような言葉も、音と一緒になれば発することができる無敵感があると思いました。だから音と共にある歌詞に惹かれたのかもしれません。歌詞を書くために曲を作ったとも言えるのかな。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    なんでも!です笑。ですが、自分に起こった出来事なんかは、1年ほど後でしか書けない気がします。主観すぎないことの方が冷静に描ける気がします。

    最近、私立恵比寿中学さんへの提供曲で「イエローライト」という曲を書きました。黄色信号からインスピレーションを得ましたが、出来上がった後、街中のビルや家々の黄色く灯る夜景を見たとき、無意識に得ていたものがここにあったと感じました。面白いことに、インスピレーションを後から知ることも多いです。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    言葉で生まれたきっかけが音となります。それはサビの時もあれば、AメロBメロの時もあり、決まっていません。そこからメロディと追いかけっこするように(積み木のような時もありますが)作られていきます。

    私のノートには大体、神経細胞というか、家系図と言いますか、そのような感じで言葉が広がっています。散らばっていても、一つの線でゆくゆく繋がるようなあんばいです。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    家だったら、必ずコーヒーを淹れます。最後まで飲みきっていない時は、はかどった証です笑。大体作詞の始まりは音作りも一緒なので自室での作業となりますが、歌詞だけの最終調整や作詞だけのお仕事の時などは、割とどんな場所でも書ける心持ちにしています。環境にこだわり過ぎて不自由になるのだけは避けたい!

    それから最近分かったのは、、、何かを『まっている』時によくアイデアが思い浮かんだりしている気がします。ノートにサラサラと走りやすいぺんてるのサインペンは、気持ち良くてお気に入りです!!

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    自身の「ぶっ殺すぞ」という曲を、大人の事情で「ぶっ飛ばすぞ」というタイトルに変更したことがありました。大切な歌詞なのに!と当時プンスカしたこともありましたが、今となっては変更して良かったのだと思っています。助言は宝です。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    攻撃ではなく刺激。 無意識のようで意識されたもの。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    1曲というか1フレーズなのですが、スピッツの「運命の人」という曲の出だし<バスの揺れ方で人生の意味が 解かった日曜日>です。初めて聞いた時はなんとなくだった理解が、ある日、バシー!!!っとキタことがあって、興奮しました。一瞬ではなく一生味わわせて頂ける歌詞だと思います。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    日常生活で辞書を引かないと読めないような分からないような小難しい言葉は避けます。発せられる歌詞は、日常会話の延長にあるようなイメージです。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    人を傷つけたり、嫌な思いをさせたりしないというのが、シンプルだけど、そうなのかなと思います。表現したものがどんな道を辿るか、何が起こりうるのか、そこを想像するのもクリエイトのうちのひとつなのかな、なんて。自分の人生の中で残ってる歌詞って、意外とありますよね。きっと影響も受けているはず。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    想像力は経験が伴ってまた一層色づくものだと思うので、様々な節目やきっかけ、その時々の感情を、丁寧に覚えておくと作品に使える(使えるというのも無粋な言い方ですが)のではないでしょうか!

歌 手
たむらぱん
タイトル
ラフ
短く、ループするようなフレーズを使った言葉を使いたかった、そして、淡々とした中に広がる熱量みたいなものを表現したかった曲です。らふらふと繰り返して歌うのは祈りのような感じでもあり、表面的ではない、色んな複雑な感情をこの2文字に乗せて仕上げられたのは奇跡のような気もしています。
田村歩美のソロプロジェクト。作詞・作曲・編曲はもちろんアートワークまで手掛けるマルチアーティストである。

2007年からSNS“MySpace”において自ら楽曲プロモーションを開始し、4ヶ月で24万回のストリーミングを達成。それがきっかけとなり2008年メジャーデビュー。その後9枚のシングルと6枚のアルバムを日本コロムビアよりリリースする。


またシンガーソングライター・たむらぱんの活動と平行し、田村歩美として渋谷PARCOでのイラストの展示会、ロッテ「Fit’s」をはじめとした数々のCMでの歌唱、そして『剛力彩芽』『私立恵比寿中学』『でんぱ組.inc』『豊崎愛生』『中川翔子』『松平健』『DISH//』『THE IDOLM@STER』への詩曲提供など多岐にわたる活動でその才能を発揮している。
INFORMATION

たむらぱんオフィシャルYoutubeチャンネルにて
たむらぱんのイラストとトークが同時に楽しめるコンテンツ
イラストレーションラジオ」を随時アップ!

豊崎愛生
4th アルバム『caravan!』
2021年6月30日発売
SMCL-716 ¥3,100(税込)
収録曲「TONE」の作詞・作曲を
たむらぱん(田村歩美)が担当!
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