私は貴方を忘れたいけど、貴方には忘れられたくない。

 2022年秋に“reGretGirl”が、3ヶ月連続で新曲を配信リリース! 今回の連続リリースは、3曲を通してひとつの恋の行方が描かれ、歌詞世界のストーリーが繋がっております。9月14日に第1弾「ルックバック」が、10月12日に第2弾「車の中から」が、そして11月2日に第3弾に「サンシャワー」がリリースとなりました。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“reGretGirl”の平部雅洋による歌詞エッセイを3ヶ月連続でお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、新曲「サンシャワー」の歌詞世界をさらに掘り下げる感情です。別れたあの日から続く、長くて孤独な夜のお話…。ぜひ歌詞と併せて受け取ってください。


今日のうたコラムを3ヶ月掲載させていただく第3弾として、今回は「サンシャワー」にまつわる文章を書かせていただきました。かけがえのない人がいなくなった日から続く夜の話。是非ご一読ください。
 
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何も変わらないはずなのに灯りを消すと、辺りの静けさが更に研ぎ澄まされるような気がする。真暗な部屋に私ひとりだけ。今日もこの夜を抱きしめて眠る。
 
今この部屋は、雨が降る前のような重たい空気、嵐が来る前のような静寂が重なり合い、寂寥の感をさらに植え付ける。乾いた洗濯物は取り込むだけで床の上で山積みになり、「どうせ誰にも見られないから」とシワが付いたまま干される下着は、今の私を写し出しているようだ。同じベッドにふたりで眠っていた時の、壁に寄りかかって眠る癖が身体に染み付いていて、枕元に置いたスマートフォンの画面がパッと光るたび「もしかして」と目が覚める。
 
本当に長い夜だ。
 
ふたりで過ごした日々は、泡のように呆気なく弾け飛び、まるであの時間が嘘だったと錯覚してしまうほど儚かった。ただ幸か不幸か、今心に突き刺さった“別れ”という名の刃がもたらすこの痛みが、あの日々を現実だったと思わせてくれるのだ。
 
立ち行かなかったこの恋には、足りないものは無く、余計なものに邪魔をされたのだと自分に言い聞かせる。「私は貴方を忘れたいけど、貴方には忘れられたくない」この我儘をわかってくれるだろうか。どうやったって嫌いになれない存在を無理にでも嫌おうとするこの惨めさをわかってくれるだろうか。
 
よく笑う所が好きだった。でもその笑顔の奥底にはいつも雲が陰っているように思えた。まるで晴れているのに雨が降っているようだ。
 
これから車に乗るたびあの日の事を思い出し、私は記憶に囚われながら、何度も後ろを振り返りながら生きてゆく。もし次、別の誰かに巡り会えても、きっと私から手を離すのでしょう。今の貴方のように。
 
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3ヶ月に渡る掲載ありがとうございました。現在我々は3ヶ月連続配信リリースと共に映像企画「Music Video&Story"煙の行方"」というショートムービーも公開しております。是非そちらも併せてご覧ください。
 
今年は本当にたくさんの今日のうたコラム書かせていただいております。またお呼びいただけるよう、これからも精進していきたいと思います。

<reGretGirl・平部雅洋>


◆紹介曲「サンシャワー
作詞:平部雅洋
作曲:平部雅洋