活動休止期間の“心”が詰まった復帰シングル!

 小説家としても活躍している、文学系シンガーソングライター“黒木渚”が、2017年9月20日にニューシングル「解放区への旅」をリリース!昨年8月、咽頭ジストニアという病により音楽活動を休止した彼女。一時期は、笑い声さえも出せないような状態だったそうです…。しかし、約1年の月日を経て、ついに今作で音楽活動へと復帰!お休み期間の心境、運命に反撃を開始する新曲たちへの想いなどなど、全力で取り戻した凛とまっすぐな御声で、力強く語ってくださいました…!

(取材・文 / 井出美緒)
解放区への旅 作詞・作曲:黒木渚
笑われた夢物語や情熱を
捨てるほど大人でもなくて
バカになる覚悟を決めて走れ
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INTERVIEW
「声が戻るのは十年先になるかも」とも言われて…。

まずは、復帰おめでとうございます!ホッとしました。去年の初めはバラエティーへの出演や、映画『全員、片想い』の主題歌を書き下ろしなど、いろんな活動をなさっていましたが、そんななかで突然の急ブレーキでしたね。

黒木:自分でもまったく予想していませんでした。デビューから4年間、お休みをいただくこと自体ほとんどなく突っ走ってやってきましたし。しかも最初はすぐに復帰できるものだと思っていたんですよ。でも休業を発表してから3ヶ月くらい経ったとき、お医者さんに「声が戻るのは十年先になるかも」とも言われて、これはかなり時間がかかるとわかったんです。それから「もしかしたらもう二度とステージに立てないのかなぁ」とか、「8月22日に出たROCK IN JAPANが人生で最後のライブだったんだ」とか、暗いことばかり考えていた時期もありました。

やっぱり身体が弱っていくと心もそれに比例していきますよね。

photo_01です。

黒木:そうなんですよ。まだ治療法が確立してないってこともあったし、大きい声で発散もできないからすごく元気がなくなるんです。結構「この落ち込み方は十数年ぶりくらいだ…」って感じになりましたね。でも、もともとの性格なのか、落ち込むことに疲れてしまって。だんだん「戻りたい!あのままじゃ終われない!」という思いに変わっていきました。そうするとリハビリのモチベーションも上がって、成果が出てくるとちょっとの回復でも気持ちが浮上してくる。そのときにやっと「ちくしょー!」みたいな気持ちになれたんです(笑)。そうだった!私はこういう人間だった!って思い出して、そこからは復帰がめまぐるしいスピードで近付いてきた気がします。

最初に喉の不調を感じたのは、いつ頃だったのでしょうか。

黒木:去年の4月8日ですね。鮮明に覚えています。違和感を感じたのは握手会の最中で、最初の症状は声枯れでした。楽しくてお客さんといっぱい喋ったから「いつもみたいにちょっとやっちゃたなぁ…」と思っていたら、その声枯れがずっと治らなくて。でも検査しても声帯に異常はなく、いろんな病院を転々としました。咽頭ジストニアという病気はまだ認知度が低いこともあり、病名を知らない先生もたくさんいたんです。だけど、いろんな人が情報をくれて、やっとたどり着いたのがジストニアの専医の方で、助かったんですよ。それまでは「やっぱり心因性のものなのかなぁ…」とかずっと悩んでいて。

病名がわからないのも不安ですよね…。原因はどういったものなのですか?

黒木:“回路のバグ”と言われました。精密な動きを何回も繰り返すことによって、脳から筋肉に伝達をする回路がバグるらしいんですよ。もともとはスポーツ選手がなりやすい病気で、彼らは手足に出ることが多いんですけど、咽頭ジストニアの場合は、それが声帯の筋肉に起きたものだとわかりつつあると。歌詞をすごく大事にする人は高確率になる病気みたいで、日本語でひと言ひと言をしっかり発音して伝えるタイプのミュージシャンに多いんですって。

こうして復帰なさったからこそお聞きできますが、もしも声がもう二度と出ないとしたらどの道に行こうか…なども考えましたか?

黒木:小説が書けるということには本当に救われて、第二の道として本気で考えました。なんか、誰か助けてって思っているときに、どうやって頼っていいのかわからなかったんです。優しくしてくれる人たちはたくさんいるんだけど、声が出ないという同じ状況を共有できるわけじゃないし、心の底から彼らに救いを求めることがまだできなくて。そんなとき、書くことで発散していました。もしも二度と声が出なくなったとして、書くことさえできなくなったら、私は頭がどうにかなってしまいそうで、書き続けていましたね。文字があってよかったです。

また、Twitterに“声が出なかった時期に自分に約束したこと”として「はっきりとモノを言えなかった日は、かえって自分が傷付くので出来るだけなんでも言う」というツイートをされていたのが印象的でした。

黒木:休業前からわりと、言わずに我慢して後悔することが日々あったんですよ。でも、声が本当に出なくなるという経験をしてみると、あのときは声なんてあんな簡単に出たのに、なんで言わなかったんだろう、もっと正直にモノを言えばよかった!もったいない!って心から思って。今までは無限だと思っていたものに限りがあると気付いたから「私は声を取り戻したら絶対に言いたいこと言うし、やりたいことやる!」って改めて決意しましたね。

他に休業中だからこそ気付いたことはありますか?

黒木:笑うことって、めっちゃ心身に良いんだなってことです!声が出なくなって一番ツラかったのって、笑えなくなったことなんですよ。口は開くんですけど、音がまったく出なくて。バラエティー番組とかもよく観るんですけど、ドーン!って笑い声をあげられないことがすごく寂しかったです。だから、大きな声で笑えるって最高!ってことは、この休業期間の大発見でした。



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