あたしのお腹がどうしてこんなに永遠に満たされないのか。

 佐賀県出身のシンガーソングライター“カノエラナ”が2022年デジタルシングル3作連続リリース!その第3弾シングル「グラトニック・ラヴ」を3月30日にリリース!<グラトニー(暴食)>×<プラトニック・ラヴ(精神的恋愛)>を掛け合わせた造語で、ジャジーな昭和歌謡を彷彿とさせる<肉食系女子>の妖艶な恋愛模様を描いた1曲です。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“カノエラナ”による歌詞エッセイをお届け。今回が最終回。綴っていただいたのは、今作「グラトニック・ラヴ」に通ずる想いです。心地よさ、目まぐるし、痛み、虚しさ、様々な感覚が<あたし>を巡るなか、<お腹が減る 何か口に入れなければ>と絶えず繰り返される本能の欲望…。歌詞と併せて、「グラトニック・ラヴ」の世界をご堪能ください。



香は煙を縦に引っ張り やがて広がり溶けていく
空気の真中(まなか)で絡まる密度は 思った三倍心地が良い
そろそろ時計がゾロ目を弾いて また巡り擦り離れてく
戸棚に飾った愛の痕跡は 戦利品とでもいうべきか
 
ーお腹が減るー
ー何か口に入れなければー
ひもじいとヒトは誰だって
生きては行けないのだから
 
変わらない日々に口付け食んでは 切り込みを入れてまた閉じる
裁縫道具は細胞の奥に 返し縫い還(かえ)しあたたかい
眼鏡に適ったようでよかったよ どうせ明日には無いけれど
戸棚に飾った本当の証 これだけがあたし 確かだもん
 
ーお腹が減るー
ー何か口に入れなければー
さびしいとヒトは誰だって
生きては行けないのだから
 
それから何度も色んな夜中を 誰これ構わず歩いたよ
化学繊維塗れのネオンの城 いつだってあたしお姫様
酒に酔うヒトも明日迷うヒトも 金が有るヒトも無いヒトも
ひとたび脱いで手繰って配ったら ほらもう誰がjOKERでしょう
 
ーお腹が減るー
ー何か口に入れなければー
等しいとヒトは誰だって
生きては行けないのだから
 
なんだかお外が騒がしくなった 嗚呼ヤダ五月蝿い 夜なのに
真っ赤な光がチカチカ迫って 目が回る地球ごと廻る
郵便受けにはぎゅう詰めのチラシ 裏紙にだってなりゃしない
戸棚に飾ったフイルムの写真 深紅に隠して蔵(しま)わなきゃ
 
ーお腹が減るー
ー何か口に入れなければー
限界を超えたら誰だって
好き嫌いはしないのだから
 
ーいただきますー
ーごちそうさまー
嗚呼でもなんだか今日の食事は
凄く薄味だったなぁ
 
散々暴れて千切って裂いたら 全部全部思い出したよ
あたしのお腹がどうしてこんなに 永遠に満たされないのか
ねぇダーリン君はあたしに言ったよ ずっと一緒に居てくれると
それなのに君は嘘ばっか吐いて 終いには逃げてしまったね
あの子のどこがそんなに良かったの? あたしちっとも分かんないよ
運命に出会った様な顔して 平穏平気で棄て去った
散々殴って砕き嫐ったら 全部全部思い出したよ
あたしの心をこんなにしたのは 戸棚の奥底マイダーリン
 
ーお腹が減るー
ー何か口に入れなければー
おかしいねアタシ今絶頂
生きてる感じがするんだ
 
ーいただきますー
ーごちそうさまー
嗚呼そろそろ満開になる頃か
それとも散って去った後か
 
飽きず桜の下に群れるヒトは
埋まった命に気付かない

<カノエラナ>



◆紹介曲「グラトニック・ラヴ
作詞:カノエラナ
作曲:カノエラナ