いつかは「愛してる」とか「ベイベー」とか言ってみたい。

 2019年6月19日に澤部渡によるソロプロジェクト“スカート”がニューアルバム『トワイライト』をリリースしました。今日のうたコラムでは、そのインタビューを第1弾~第4弾に分けてお届けいたします!第1弾ではスカートの軌跡と音楽性について、第2弾&第3弾ではニューアルバム収録曲について、第4弾では澤部さんの作詞論についてお伺い。いよいよ本日は、ラスト・第4弾をご堪能ください!

― 澤部さんが歌詞を書くときに大切にしていることは何ですか?

机が綺麗な状態であることですね(笑)。自分の家だと机が汚すぎて、作詞できなくなっちゃって、最近はファミレスとかで書いています。僕はペンで書くんですよ。だからどうしても机が綺麗じゃないと。あとマンガとか好きな詩集とかもよく持っていきますよ。そこからインスピレーションを得ることも多々あります。

― 澤部さんにとって歌詞を書くこととはどんなことなのでしょうか。これまでのお話をお伺いしていると、ご自身の感情を発散させているわけではなさそうですよね。

そうなんですよねぇ。自分でもいっつもそれを考えるんです。僕にとって歌詞を書くことって何なんだろう。まぁ…本当ならマンガが書ければそれが一番良いと思っているんですよ。でもそれが無理だから、曲を書いているというところもあって。歌詞でマンガを体現しているというか。マンガみたいに曲を書きたいって常々思っています。とにかくマンガ大好きですね。今も鞄に『ガラスの仮面』が入っていて、また1から読み返しちゃっています(笑)。

― 本当にマンガお好きなんですねぇ。ちなみに今イチオシの作品というと?

今はねぇ、もちろん今回のジャケットを手がけてくれた鶴谷香央理さんであることは大前提としまして。こないだ新刊で出た、田島列島さんというマンガ家さんの『水は海に向かって流れる』という作品が最高でした。(※アマゾンリンク)あらすじだけ読むと、暗くて複雑なんですけど、言葉のやりとりとかが絶妙で、そんなに暗い話にはなっていないんですよ。めちゃくちゃ面白いですよ!

― 歌詞面で影響を受けたアーティストというと、どなたが浮かびますか?

たくさんいますね。まず松本隆さんも大好きですし。やっぱり“はっぴいえんど”を初めて聴いたときはすっごい衝的でしたよ。当時は小学生ぐらいだったんですけど、シングルが出ていてその歌詞がね、聴いたことのない言葉遣いで。抽象的な言葉から情景が沸き立つような感じが、大好きでした。受けた影響は大きいですね。

― 澤部さんが歌詞でよく使う好きな言葉はありますか?

今回はあまり使わなかったんですけど【窓】とか好きなんですよね。想像がしやすいから。向こう側とこちら側というか。あと【ここにいない・いる】というニュアンスの言葉も多いなと気づきました。

とくにこのアルバムの最後は「トワイライト」の<君とここにいないだなんて!>と「四月のばらの歌のこと」の<ここにいるのに>と続きましたし、「花束にかえて」でも<それでも青い鳥は そこにはいない>って書きましたしね。

意識して不在を歌ったアルバムにしたつもりはなかったんですけど、意外とそうだったのかもしれないと後から歌詞を読み返して思いましたね。あー、今の自分のモードはこれだったんだぁ!ってハッとしました(笑)。

― 逆に、あまり使わないようにしている言葉はありますか?

普段だったら使わないけど使っちゃった系だったら、「君がいるなら」の<何もなくても 君がいるなら 僕はまだ歩いてゆける>とか、そういうフレーズかなぁ。あと「沈黙」でも<抱き合う>とか、そういうこう…関係を匂わせるワードは久しぶりに使ったかもしれません。

― あまり恋愛めいた言葉は使いませんか?

使わない使わない。でもやっぱりね…みんなラブソング好きじゃないですか(笑)。そう考えると分が悪いなぁっていつも思うんですけど。まぁ今回は自分のわりに、ラブソングっぽく取れるものが多いかなぁって。

だけど改めて「好き」とか「愛してる」とか「抱きしめる」とか言わないと、なかなかラブソングは成立しないんだなっていうことは、思いましたね。どうしても“ザ・ラブソング”にはならないんですよねぇ。


― ありがとうございました!最後に、これから挑戦してみたい新たな歌詞はありますか?

そりゃラブソングですよ~!毎回なんか上手くいかないから。いつかは「愛してる」とか「ベイベー」とか言ってみたいと思います。そのいつかがいつ来るかはわかりませんけど(笑)。

【第1弾】はコチラ!
【第2弾】はコチラ!
【第3弾】はコチラ!

(取材・文 / 井出美緒)

◆Major 2nd Album『トワイライト』
2019年6月19日
初回限定盤 PCCA-04799 ¥3,200+税
通常盤 PCCA-04800 ¥2,600+税

<収録曲>
01.あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
02.ずっとつづく
03.君がいるなら(映画『そらのレストラン』主題歌)
04.沈黙
05.遠い春(映画『高崎グラフィティ。』主題歌)
06.高田馬場で乗り換えて
07.ハローと言いたい
08.それぞれの悪路
09.花束にかえて(映画『そらのレストラン』挿入歌)
10.トワイライト
11.四月のばらの歌のこと

【アルバム歌詞一覧】