かつて「宇宙人」だった私は恐らく今、間違いなく「人間」であろう。

 2020年11月11日に“熊木杏里”がニューアルバム『なにが心にあればいい?』をリリースしました。思うように外にも出られず、不安や焦燥を感じてしまう世の中になってしまった今だからこそ、レコーディングというものにライブを込め、アルバムとして届けよう。そんな想いが強く形となって出来た今作。珠玉の11曲をじっくりとご堪能ください。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“熊木杏里”による歌詞エッセイを3週連続でお届けいたします。今回は第1弾第2弾に続く最終回。一体、このアルバムの根底にあるものは何なのか。その核の象徴となるような新曲「」に込めたメッセージとは…。是非、エッセイを読んだ上で今作の歌詞たちを改めて受け取ってください。

~歌詞エッセイ最終回~

最初にマネージャーとして一緒に、お仕事をしていた方に言われたことがある。

「熊木さんは宇宙人でいいんですよ」

20歳そこそこの、私の歌詞は、その言葉の様にもしかしたら、どこか地に足のついていない、不思議な宇宙からのセリフのように聞こえていたのかもしれない。当時のマネージャーは、その感じをとても面白がってくれていた。

自分の中の言葉を抽出する仕組みは、変えたつもりはない。だけど、日々の中で少しずつ変わってきたのだろうと思う。今作では、言葉よりも、それに伴うメロディの方に心が波打っていた気もする。メロディの持つ、希望感が先にあって、言葉の狼煙をあげる様な。それ位に、躍動のあるアルバムにしたいと思っていた。

メロが先立つ感覚のままスルスルと言葉も合体して出てきた。その場合、私は書き直さない。そして10曲が、その様にして出来た。ふと、このアルバムの根底にあることとは何だろうかと考える時間がやってきた。これは毎回、アルバムの曲を一頻り書き終えた頃に、湧いてくる問いだ。

優しくも強い、自分にしか書けない「今」だからこそ聞いてもらえる様な、この気持ちを総括した曲にしようと思った。そして胸に問いかけた。それは「想い」だった。見えないから分からないのだけれど、だからこそ愛に満ちることができるものだ(逆に悪にもなる、、ではあるが)。

迷いや恐れ、悲しみ、喜び。自分だけのものなら、その正体は分からないのだ。その想いに行先があるからこそ、実感するものだと私は思う。

」はそうして最後にできた曲だ。1行目の<「ひとり」を崩して「ふたり」を作り 人は人になることにしたのだろう>が書けるまで、とんでもなく体力が減った。

強い言葉とは人を傷つける様な言葉ではない。その人の想いが多く含まれているのがわかる言葉のことだと思う。アレンジを務めてくれた森田晃平くんがデモを聴いて言った。「杏里さんらしさが1番ある」と。

かつて「宇宙人」だった私は恐らく今、間違いなく「人間」であろう。それはこの人間界に対しての愛着が増えているからだと思うのだ。

<熊木杏里>

◆紹介曲「
作詞:熊木杏里
作曲:熊木杏里

◆『なにが心にあればいい?』
2020年11月11日発売
初回限定盤 YCCW-10376/B \4,800+ 税
通常盤 YCCW-10377 \2,727+ 税

<収録曲>
1. life
2. 幸せの塗り方
3. ことあるごとに
4. 星天の約束
5. 光のループ
6. 一輪
7. 見ていたいよ
8. ノスタルジア
9. 青葉吹く
10. 雪~二人の道~
11. 秤